本文へスキップ

梨交差ジョイント育成について   2014年 田中 茂 著

 近年、神奈川県農業試験場において 幼木同士をジョイントまた、早期に成木園にするために、密植栽培する技術がある。 しかし、10年20年たち、成木園になった園を切り替えることはなかなか無理である。 しかし近年急激な温暖化や6月の少雨など、気象変動が多く、特に幸水に萎縮病や紋羽病また、 根頭癌腫病など、樹勢を弱める要素が多くなってきた。
 そこで今の稙園で、樹勢の衰えた木を元に戻し、それ以上に樹勢をよくする方法を考えた。
 樹勢の弱った先端部分をジョイントし、なおかつ樹勢の強い品種を先端に接木する方法で、下図のようにする方法である。

今回の方法は8m間隔で4m間で4mずらし、(8m互の目)方式で行う方法。

 この方法については、これからの課題であるが、これまでの経験で分かってきたのは、根頭癌腫病にかかり樹勢の弱った木に、ル・レクチェやレッドコミスに接木したところ樹勢が回復した。癌腫病にかかっているところはかなり進み、キノコまで生えていたが、樹勢は衰えるどころか強まった。 いまでもキノコは発芽するが、樹勢はかわらない。
 このことがあり、上部の品種又、樹勢により根のコントロールができるのではないかと思う。(写真1.2)

 

上写真を見るように、ふつうでしたら樹勢が落ち枯れてしまうところが、かなり樹勢が良い。 これでわかるように、上部品種樹勢により変わることがわかる。 このことから、先端部分や上部の樹勢を保つことが重要とわかる。

 先端部分の樹勢を強く保つことが重要と思い、交差ジョイントを思いついた。 ジョイントするだけでなく、先端部分により樹勢の強く、病気に強いものを接木することで、先端部分にまで樹勢を引く力があるのではないかと思う。 この方法を取り入れることで樹勢が良くなるであろう。 また、主枝を長くすることでの先端部分までの樹勢の維持は、非常に難しくメリットよりデメリットが多いのではないかと思う。 これはどの品種でも同様とおもわれる。

 この交差ジョイント栽培方式には、メリットはかなりあると思う。 二本主枝で先端部分をジョイントし(図2)先端部分に樹勢の強い品種を接げることにより、主幹に近い第一結果枝でも先端に近い結果枝でも、先端での引く力が強ければ、2本の結果枝は樹勢の力に大差は出ないであろう。 先端での引く力が強ければ、主幹近くの結果枝から、先端までの結果枝の長さも均等に伸ばせるだろう。 これにより、収穫量が安定できると思う。


                主幹間8m

主幹間隔は4mくらいが理想ある。 4m主幹間ですと2本主枝で、結果枝間隔が40pから45pで片側8本としても32本の結果枝が取れる。 一本の結果枝で平均8果結実すると、1本の樹で250果結実することになる。

 これは、1果400g以上での計算である。 これは幸水の試算です。 また、分岐部分の高さだが、棚下30p位が理想である。 というのも、棚上に主枝を早く上げることで、第一結果枝が分岐地点より60p以内で正常な高さ、つまり棚と平行な位置に出すことができる。 この第一、第二結果枝はなるべく主枝の下部より出すほうが良い。

 また、主幹から1.5m以内の結果枝は必ず摘心を行う。 摘心を行うことにより、結果枝の太りを抑えることができる。 ある程度の太さまで結果枝として使うことができ、安定した果実が収穫できる。

 結果枝は摘心により、ある程度の太さになると貯蔵養分を溜めることができ、そこに結実した果実は肥大することができる。また、摘心により葉の枚数が多くなるので安定した果実が収穫できる。 
 この様に主枝同士をジョイントすることにより、お互いの主枝を強めることなく、先端部分まで樹勢が保たれる。 先端部分がジョイントされ、なおかつ樹勢の良いものを先端部分に接木することで、先端まで養分がいきわたり、樹勢の維持ができる。
 これは先の写真で分かるように、根頭癌腫病に侵されていても、樹勢の良いものを接木することにより、樹勢が回復することがわかるだろう。
 まだ研究は始まったばかり。 これからのデータが楽しみである。

 先端部分のジョイント
 先端にレッドコミスを接木


先に説明したが、ジョイント部分になぜ西洋ナシをつげるのかというと、一般に落葉が遅く葉の枚数が多く、病気に強いのが特徴で、(写真下1)主幹より肥大していることがわかる。 このように育成が早いのが特徴で、養分を引き込むことができると思う。
 この栽培方法で難しいことは、第一結果枝や主幹に近い結果枝をいかに主枝の枝の下部より出すことである。 出す方法を考えた人がいる。 鎌ケ谷市内の神崎重利氏である。
 この方法は私と同じ考えだが、独特の考え方で特に、若木の育成に効果的である。 (写真下2.3.4.5)を見ればわかると思うが、これは剪定期にする方法と6月、7月の時にする方法でどちらも必要でない枝を使う方法である。
 私は7月に行う方法を試してみた(写真4.5)である。 まだ試作段階ではあるが、神崎氏はかなりの成果を出している。 今のところジョイント部分の成果はわからないが、レッドコミスはかなりの良い成長をしている。(写真6)これからの経過が楽しみである。

写真1
 写真2
 写真3
 写真4
 写真5
 写真6

inserted by FC2 system